巨人監督になった松井秀喜の打撃を王貞治や歴代4番と比べてみた
目次
2026年10月23日、巨人が松井秀喜の監督就任を発表した。
背番号は、長嶋茂雄が監督1年目の1975年から6シーズン背負った「90」だ(時事通信、NHK)。
監督としての数字はまだ1試合分もなく、経歴ならWikipediaにまとまっている。
松井秀喜が好きなので、打者としての成績のほうを計算してみた。
対象は巨人での10年(1993〜2002年)とメジャーでの10年(2003〜2012年)で、どちらもその年のリーグ平均を基準にする。
比べる相手は、王貞治をはじめとする歴代の巨人の監督と、松井のあとに巨人の4番を打った打者だ。
検証環境とデータ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| OS | Windows 11 |
| Python | 3.12.11(uvで作った仮想環境) |
| ライブラリ | pandas 3.1.0、pybaseball 2.2.7、matplotlib 3.11.2 |
データはどれもPythonで取得し、pandasで集計した。
| データ | 中身 | 取得方法 |
|---|---|---|
| 日本プロ野球記録 | セ・リーグの年度別チーム打撃成績(四球・死球・犠飛を含む)と、規定打席到達者の打撃成績(1958〜2025年) | 年度別ページの表を取得 |
| NPB公式サイト | 松井の巨人時代の年度別成績(併殺打を含む) | 個人ページの表を取得 |
| Wikipedia「読売ジャイアンツ歴代4番打者一覧」 | 年度ごとに最も多く4番で先発した打者 | 記事の表を参照 |
| MLB Stats API | メジャーの年度別成績、打撃と守備の評価指標(wRC+、WARとその内訳。意味はメジャーのWARの節で説明する)、場面別成績、ポストシーズン、ア・リーグのチーム成績 | statsapi.mlb.com のJSONを直接取得 |
| Baseball Savant | 2008年以降の1球ごとのデータ(コース、球種、球速、スイングの有無、打球方向) | pybaseballの statcast / statcast_batter |
MLB Stats APIは認証なしでJSONを返すので、標準ライブラリだけで取れる。
たとえば2004年のwRC+とWARは次のように取り出せる(425686は松井の選手ID)。
import json, urllib.request
url = "https://statsapi.mlb.com/api/v1/people/425686/stats?stats=sabermetrics&group=hitting&season=2004"
stat = json.load(urllib.request.urlopen(url))["stats"][0]["splits"][0]["stat"]
print(round(stat["wRcPlus"]), round(stat["war"], 1)) # 140 3.0
リーグ全体の出塁率を出すには、リーグの四球・死球・犠飛の合計がいる。
最初にNPB公式サイトの年度別ページを開いたが、2004年以前のチーム打撃成績には四球が載っていなかった。
Wikipediaの年度別のチーム打撃成績のテンプレートには松井の時代の四球まで入っていたが、王の時代の1962年と1973年の分は空欄だった。
最終的に、1958年から2025年まで同じ形式で四球・死球・犠飛まで載っている日本プロ野球記録の表を使った。
メジャーの指標はFanGraphsやBaseball-Referenceの値がよく使われるが、どちらのサイトもスクリプトからのアクセスを403で拒否したので、MLB Stats APIが返す値を使った。
APIのwRC+とWARは2サイトの公表値と計算方法が違い、一致しない可能性がある。
今回はその2サイトとの突き合わせはしていない。
比べる指標はOPS+
時代もリーグも違う打者を並べるので、成績をその年のリーグ平均で割った値を使う。
使うのはOPS+で、出塁率と長打率をそれぞれリーグ平均で割って足し、1を引いてから100を掛ける。
リーグ平均の打者がちょうど100になり、200なら出塁率と長打率の両方がリーグ平均の1.5倍前後あることになる。
出塁率と長打率は、それぞれ次の式で計算する。
リーグの値は、セ・リーグ6球団のチーム打撃成績の安打や四球を全部足してから、同じ式に入れて出した。
| 指標 | 計算式 |
|---|---|
| 出塁率 | (安打+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠飛) |
| 長打率 | 塁打÷打数 |
たとえば2002年の松井は出塁率.461、長打率.692で、この年のセ・リーグ全体は出塁率.313、長打率.394だった。
.461÷.313が約1.47、.692÷.394が約1.76なので、足して1を引くと約2.23になり、100を掛けてOPS+は約223になる。
Baseball-Referenceなどが公表している一般的なOPS+は、球場の打ちやすさの補正も加えた値だ。
この記事のOPS+はリーグ平均で割っただけのもので、補正を入れていないところが2つある。
| 補正していない点 | 影響 |
|---|---|
| 球場の広さや打ちやすさ | 後楽園球場(王の時代)と東京ドーム(松井の時代)の差がそのまま数字に出る |
| 投手の打席 | セ・リーグは投手も打席に入るので、リーグ平均が下がり、野手のOPS+は高めに出る。指名打者制のア・リーグで計算した値とは直接比べられない |
セ・リーグの打者同士なら条件はほぼそろうので、王・松井・歴代の4番の比較にはこのまま使う。
巨人時代の松井
規定打席に到達した1994年から2002年までの松井を、セ・リーグの規定打席到達者の中での順位と並べた。
1993年は高卒1年目で、規定打席に達していない。
規定打席は首位打者などの打率系タイトルの対象になる打席数で、NPBでは「チームの試合数×3.1」になる。
順位はOPS+の高い順に付けていて、「/31人」の分母はその年に規定打席に到達したセ・リーグの打者の数だ。
| 年 | 打席 | 本塁打 | 出塁率 | 長打率 | OPS+ | セ・リーグ順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1994 | 569 | 20 | .368 | .475 | 134 | 8位/31人 |
| 1995 | 569 | 22 | .363 | .481 | 131 | 9位/30人 |
| 1996 | 569 | 38 | .401 | .622 | 174 | 2位/38人 |
| 1997 | 596 | 37 | .419 | .564 | 169 | 2位/34人 |
| 1998 | 603 | 34 | .421 | .563 | 175 | 1位/35人 |
| 1999 | 573 | 42 | .416 | .631 | 178 | 3位/31人 |
| 2000 | 590 | 42 | .438 | .654 | 198 | 1位/29人 |
| 2001 | 611 | 36 | .463 | .617 | 195 | 2位/34人 |
| 2002 | 623 | 50 | .461 | .692 | 223 | 1位/30人 |
1996年からの7年間は、OPS+がすべて169以上で、セ・リーグでの順位も3位以内だった。
最後の2002年は50本塁打でOPS+223と、巨人時代でいちばん高い。
王貞治と歴代の巨人の監督と比べる
1975年以降に就任した巨人の監督のうち、野手出身の5人(王貞治、長嶋茂雄、原辰徳、高橋由伸、阿部慎之助)の現役時代を同じOPS+で計算した。
同じ期間の監督でも、投手出身の藤田元司と堀内恒夫は入れていない。
監督の一覧はWikipediaの「読売ジャイアンツ」の歴代監督の表から取り、巨人に在籍してセ・リーグの規定打席に到達したシーズンだけを数えた。
| 打者 | 監督就任 | 規定打席到達 | 最高OPS+(年) | OPS+200以上 | OPS+170以上 | リーグ1位 | 打席数で重み付けした平均 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 王貞治 | 1984年 | 21シーズン | 279(1973年) | 15回 | 17回 | 14回 | 221 |
| 長嶋茂雄 | 1975年 | 17シーズン | 249(1961年) | 7回 | 11回 | 4回 | 181 |
| 松井秀喜 | 2026年10月発表 | 9シーズン | 223(2002年) | 1回 | 6回 | 3回 | 176 |
| 阿部慎之助 | 2024年 | 12シーズン | 206(2012年) | 1回 | 2回 | 2回 | 146 |
| 原辰徳 | 2002年 | 12シーズン | 169(1986年) | 0回 | 0回 | 0回 | 143 |
| 高橋由伸 | 2016年 | 8シーズン | 168(2007年) | 0回 | 0回 | 1回 | 146 |
松井は最高値でも平均でも王と長嶋に次ぐ3番目で、王の監督時代(1984〜1988年)より後に就任した監督に限ると、松井を上回るのは1993年に再登板した長嶋だけになる。
現役時代の打撃で比べると、松井はON(王と長嶋の頭文字を取った呼び名)の2人以来の監督だ。
本塁打の数だけで比べると、順位は入れ替わる。
松井の巨人での本塁打は332本で、長嶋の444本、阿部の406本、原の382本より少ない。
巨人での在籍が10年だったためで、メジャーの175本を足した日米通算では507本になる。
王とは差が大きく、王はOPS+200以上のシーズンが15回あり、1964年から1974年までは11年連続でリーグ1位だった。
松井が200を超えたのは2002年の1回だけで、その223も、王が200を超えた15シーズンの中に入れると下から6番目になる。
同じ年齢どうしでも差があるのかを確かめるため、2人のOPS+を年齢別に並べてみた。
グラフの点線は、松井のメジャーでのOPS+をア・リーグ平均で計算したもので、500打席以上の年だけを載せている。
ア・リーグは指名打者制で投手が打席に入らないため、セ・リーグの値とは同じ高さで比べられない。
松井がセ・リーグでの最高の223を出した28歳の時点でも、王は同じ年齢で251と上回っている。
松井のあとの巨人の4番
松井がメジャーへ移った2003年以降、各年で最も多く4番で先発した打者のOPS+を出した。
どの試合で誰が4番を打ったかの打順データは集められなかったので、Wikipediaの一覧にある年度ごとの「最多4番」をそのまま使っている。
規定打席に達しなかった2003年(ペタジーニ)、2015・2016年(阿部)、2025年(岡本)は除いている。
| 年 | 打者 | 打席 | 本塁打 | 出塁率 | 長打率 | OPS+ | セ・リーグ順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2000 | 松井秀喜 | 590 | 42 | .438 | .654 | 198 | 1位/29人 |
| 2001 | 松井秀喜 | 611 | 36 | .463 | .617 | 195 | 2位/34人 |
| 2002 | 松井秀喜 | 623 | 50 | .461 | .692 | 223 | 1位/30人 |
| 2004 | 高橋由伸 | 477 | 30 | .387 | .580 | 148 | 8位/38人 |
| 2005 | 小久保裕紀 | 592 | 34 | .361 | .523 | 136 | 9位/34人 |
| 2006 | 李承燁 | 592 | 41 | .389 | .615 | 177 | 3位/29人 |
| 2007 | 李承燁 | 583 | 30 | .322 | .501 | 123 | 15位/34人 |
| 2008 | ラミレス | 600 | 45 | .373 | .617 | 173 | 2位/33人 |
| 2009 | ラミレス | 608 | 31 | .347 | .544 | 150 | 5位/29人 |
| 2010 | ラミレス | 606 | 49 | .338 | .613 | 152 | 5位/31人 |
| 2011 | ラミレス | 515 | 23 | .322 | .453 | 140 | 6位/24人 |
| 2012 | 阿部慎之助 | 556 | 27 | .429 | .565 | 206 | 1位/24人 |
| 2013 | 阿部慎之助 | 529 | 32 | .427 | .564 | 182 | 3位/21人 |
| 2014 | 阿部慎之助 | 526 | 19 | .340 | .425 | 112 | 18位/27人 |
| 2017 | 阿部慎之助 | 512 | 15 | .329 | .389 | 107 | 23位/28人 |
| 2018 | 岡本和真 | 616 | 33 | .394 | .541 | 155 | 8位/31人 |
| 2019 | 岡本和真 | 628 | 31 | .343 | .485 | 130 | 12位/30人 |
| 2020 | 岡本和真 | 500 | 31 | .362 | .545 | 151 | 8位/27人 |
| 2021 | 岡本和真 | 592 | 39 | .341 | .530 | 147 | 5位/32人 |
| 2022 | 岡本和真 | 589 | 30 | .336 | .469 | 136 | 7位/27人 |
| 2023 | 岡本和真 | 589 | 41 | .374 | .584 | 184 | 1位/27人 |
| 2024 | 岡本和真 | 611 | 27 | .362 | .501 | 166 | 3位/24人 |
2003年から2024年までの19シーズンで、松井の2002年の223を超えた4番はいない。
松井が4番に固定された2000年の198を超えたのも2012年の阿部の206だけで、ほかの18シーズンはどれも松井の4番時代の3年(195〜223)より低い。
2010年のラミレスは49本塁打を打っているが、出塁率は.338で、OPS+は152だった。
本塁打の数が近くても四球の多さで差がつき、2002年の松井は四球が114個で、出塁率は.461だった。
NPBとMLBで打席あたりの割合を比べる
巨人での最後の4年(1999〜2002年)と、ヤンキースでの5年(2003〜2007年)を、打席あたりの割合で比べた。
NPBの数字はNPB公式サイト、MLBの数字はMLB Stats APIの年度別成績から計算している。
平均を出すときは、NPBは4年すべて、MLBは出場が201打席と少ない2006年を除いた4年を使う。
本塁打率・四球率・三振率は、それぞれの数を打席数で割った値だ。
ISOは長打率から打率を引いた値で、単打を除いた長打力だけを表す。
| リーグ | 年 | 打席 | 本塁打率 | 四球率 | 三振率 | ISO | 出塁率 | 併殺打 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| NPB | 1999 | 573 | 7.3% | 16.2% | 17.3% | .327 | .416 | 3 |
| NPB | 2000 | 590 | 7.1% | 18.0% | 18.3% | .338 | .438 | 1 |
| NPB | 2001 | 611 | 5.9% | 19.6% | 15.7% | .284 | .463 | 9 |
| NPB | 2002 | 623 | 8.0% | 18.3% | 16.7% | .358 | .461 | 4 |
| MLB | 2003 | 695 | 2.3% | 9.1% | 12.4% | .148 | .353 | 25 |
| MLB | 2004 | 680 | 4.6% | 12.9% | 15.1% | .224 | .390 | 11 |
| MLB | 2005 | 704 | 3.3% | 8.9% | 11.1% | .191 | .367 | 16 |
| MLB | 2006 | 201 | 4.0% | 13.4% | 11.4% | .192 | .393 | 6 |
| MLB | 2007 | 634 | 3.9% | 11.5% | 11.5% | .203 | .367 | 9 |
NPBの4年平均とMLBの4年平均を比べると、本塁打率は7.1%から3.5%、四球率は18.0%から10.6%で、どちらもほぼ半分になった。
ISOも.327から.192まで下がっている。
一方で三振率は17.0%から12.5%に下がった。
長打と四球が減ったのに三振も減っているので、メジャーでは空振りを減らしてボールに当てる打ち方をしていたようだ。
2002年に4本だった併殺打は、2003年に25本まで増えた。
この年はアウトになった打球がゴロに偏っていて、ゴロでアウトになった数をフライやライナーでアウトになった数で割った値(GO/AO)が1.66と、メジャーの10年間でいちばん高い。
翌2004年にはこれが0.91まで下がり、本塁打も16本から31本に増えている。
ア・リーグ平均で計算したOPS+は、2003年が107、2004年が136だった。
規定打席に到達した7シーズンでは、最も低い2011年が92、最も高い2004年が136になる。
メジャーでのwRC+とWARの内訳
メジャーでの評価には、MLB Stats APIが返すwRC+とWARを使う。
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| wOBA | 四球、単打、二塁打、本塁打などに、得点への貢献の大きさに応じた重みを付けて合計した値で、OPSより得点との対応がよい |
| wRC+ | 打撃で生み出した得点を、リーグ平均を100として表したもの。140ならリーグ平均の打者より4割多く得点を生んでいる |
| WAR | その選手の代わりに控えレベルの選手(代替選手)を出した場合と比べて、何勝分多くチームに上積みしたか |
MLB Stats APIはWARの内訳も返す。
打撃(batting)、守備(fielding)、走塁(baseRunning)、ポジション補正(positional)の4つは、どれも平均的な選手との差を得点で表した値だ。
この4つに、リーグ補正(wLeague)と代替選手との差の分(replacement)を足し、1勝に必要な得点数で割るとWARになる。
ポジション補正は、守るポジションの難しさの差を埋めるための点数で、遊撃手や捕手はプラス、一塁手や左翼手はマイナスになる。
守備に就かない指名打者(DH)がいちばん大きく引かれる。
年度ごとのwRC+とWARを、規定打席に到達したア・リーグの打者の中での順位と並べた。
2006年は51試合、2008年は93試合、2012年は34試合の出場で、規定打席に達していない。
| 年 | 球団 | 打席 | wRC+ | wRC+のAL順位 | WAR | WARのAL順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2003 | ヤンキース | 695 | 109 | 44位/85人 | 0.2 | 75位/85人 |
| 2004 | ヤンキース | 680 | 140 | 8位/77人 | 3.0 | 43位/77人 |
| 2005 | ヤンキース | 704 | 128 | 16位/82人 | 2.5 | 39位/82人 |
| 2006 | ヤンキース | 201 | 130 | - | 0.7 | - |
| 2007 | ヤンキース | 634 | 124 | 19位/82人 | 2.9 | 35位/82人 |
| 2008 | ヤンキース | 378 | 112 | - | 0.8 | - |
| 2009 | ヤンキース | 528 | 127 | 19位/75人 | 2.4 | 45位/75人 |
| 2010 | エンゼルス | 558 | 126 | 17位/73人 | 1.5 | 50位/73人 |
| 2011 | アスレチックス | 585 | 93 | 57位/76人 | 0.2 | 65位/76人 |
| 2012 | レイズ | 103 | 20 | - | -1.0 | - |
2004年はwRC+がア・リーグ8位なのに、WARでは43位まで下がる。
2005年から2010年も同じで、wRC+は16〜19位に入るのに、WARは35〜50位だった。
WARで順位が下がる理由は、内訳を年度別に積み上げるとわかる。
10年分の内訳を合計した。
| 内訳 | 10年合計(得点) |
|---|---|
| 打撃 | +120.3 |
| 守備 | -79.4 |
| ポジション補正 | -79.1 |
| 走塁 | -1.4 |
| リーグ補正 | +19.4 |
| 代替選手との差 | +154.2 |
守備とポジション補正を合わせると-158.5点で、打撃で稼いだ+120.3点を上回っている。
それでもWARが13.2勝とプラスに残るのは、代替選手との差の+154.2点とリーグ補正の+19.4点が足されるからだ。
代替選手との差は出場した打席数に比例して足される点で、695打席に立った2003年は+21.5点、103打席だった2012年は+3.0点になっている。
10年分の5066打席で、これが合計+154.2点になった。
外野を守っていた2003〜2005年は、守備だけで毎年15〜22点を失っている。
2003年の守備-22.2点は、メジャー全体で規定打席に到達した166人の中で最下位だった。
2009年からはほぼDHになり、守備のマイナスはほとんど消えた。
その代わりにポジション補正のマイナスが年に-13点前後まで大きくなり、打撃で稼いだ点の大部分はそのマイナスで消えた。
2008年以降のスイングの中身
2008年以降は、1球ごとのデータからスイングの中身を調べられる。
2014年までのコースや球速は、球場に置いたカメラで投球を追うPITCHf/xという仕組みで計測されたもので、2015年からのStatcastとは計測方式が違う。
Baseball Savantがストライクゾーンを9分割した zone の1〜9をゾーン内、それ以外をゾーン外として集計し、同じ年の左打者全体の平均と比べた。
リーグ全体のデータは各年およそ70万球あり、バントは除いている。
表のゾーン外スイング率は、ストライクゾーンを外れた球に手を出した割合で、コンタクト率は、スイングしたうちバットに当たった割合だ。
空振り率(全投球)は投げられた球全体のうち空振りした割合で、右端の列は93マイル(約150キロ)以上の速球を振ったときに空振りした割合になる。
| 年 | 対象 | ゾーン外スイング率 | コンタクト率 | 空振り率(全投球) | 93mph以上の速球の空振り/スイング |
|---|---|---|---|---|---|
| 2008 | 松井 | 25.1% | 86.6% | 5.8% | 8.6% |
| 2008 | 左打者平均 | 28.0% | 81.7% | 8.1% | 14.8% |
| 2009 | 松井 | 23.8% | 84.1% | 6.3% | 8.4% |
| 2009 | 左打者平均 | 27.1% | 81.4% | 8.1% | 15.1% |
| 2010 | 松井 | 20.2% | 84.5% | 6.1% | 15.4% |
| 2010 | 左打者平均 | 27.5% | 81.1% | 8.2% | 15.0% |
| 2011 | 松井 | 24.3% | 85.4% | 5.9% | 9.1% |
| 2011 | 左打者平均 | 28.4% | 81.2% | 8.4% | 15.3% |
4年とも、ゾーン外の球を振る割合は左打者平均より3〜7ポイント低く、振ったときにバットに当てる割合は3〜5ポイント高い。
34〜37歳の時期でも、ボール球を見送り、振ればバットに当てる打者だった。
93マイル以上の速球に対しては、空振りがスイングの8〜9%で、左打者平均の約15%の6割程度だった。
例外は2010年で、この年だけ平均並みの15.4%に上がっている。
松井が1年に対戦した93マイル以上の速球は300〜450球ほどで、スイングはその半分以下になる。
1年ごとの差は誤差の範囲かもしれない。
打球の方向
打球の方向も同じデータから、Baseball Savantの打球座標を使って本塁からの角度を出した。
左打者なので、一塁側へ15度以上ずれた打球を引っ張りとした。
この時代の打球の種類(ゴロ・ライナー・フライ)は、記録員が目視で分類したものだ。
| 年 | 対象 | ゴロの引っ張り率 | フライの引っ張り率 | 打球に占めるゴロの割合 |
|---|---|---|---|---|
| 2008 | 松井 | 65.1% | 25.0% | 47.6% |
| 2008 | 左打者平均 | 56.7% | 25.0% | 45.6% |
| 2009 | 松井 | 67.9% | 31.9% | 38.9% |
| 2009 | 左打者平均 | 57.0% | 25.8% | 45.5% |
| 2010 | 松井 | 67.1% | 31.4% | 41.0% |
| 2010 | 左打者平均 | 58.6% | 25.2% | 45.9% |
| 2011 | 松井 | 56.7% | 31.8% | 42.8% |
| 2011 | 左打者平均 | 59.3% | 26.5% | 46.1% |
2008〜2010年は、ゴロの3分の2が一塁側へ飛んでいて、左打者平均より8〜11ポイント多い。
28本塁打を打った2009年は、打球に占めるゴロの割合が38.9%まで下がり、左打者平均より6.6ポイント少なかった。
この年のISOは.235で、メジャーの10年間でいちばん高い。
ゴロが減ってフライの引っ張りが増えた年に、長打も増えている。
wRC+が93に下がった2011年は、ゴロの引っ張り率が56.7%で、初めて左打者平均を下回った。
対左投手、得点圏、ポストシーズン
メジャーでの場面別の成績を、MLB Stats APIの場面別データ(statSplits)から10年分合算した。
| 場面 | 打席 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS | 本塁打 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 全体 | 5066 | .282 | .360 | .462 | .822 | 175 |
| 対右投手 | 3534 | .281 | .367 | .464 | .831 | 119 |
| 対左投手 | 1532 | .284 | .345 | .457 | .802 | 56 |
| 得点圏 | 1493 | .294 | .379 | .472 | .851 | 46 |
| ポストシーズン通算 | 235 | .312 | .391 | .541 | .933 | 10 |
| 2009年ワールドシリーズ | 14 | .615 | .643 | 1.385 | 2.027 | 3 |
対左のOPSは対右より.029低いだけで、打率だけなら対左のほうが高い。
ポストシーズンでは通算235打席でOPS .933だった。
レギュラーシーズン通算の.822より1割以上高い。
日本人で初めてMVPを取った2009年のワールドシリーズは、6試合で13打数8安打、3本塁打、8打点だった。
メジャーの日本人野手と並べる
同じMLB Stats APIの値で、メジャーでプレーした日本人野手の通算を並べた。
選手ごとに people/{選手ID}/stats?stats=sabermetrics を年度別に取得し、在籍した年を合計している。
1000打席以上の選手に絞り、打撃の得点を600打席あたりに直して比べている。
2026年の数字は、取得した2026年10月24日時点の値だ。
大谷翔平のWARは打者としての分だけで、投手としての分は入っていない。
| 選手 | 期間 | 打席 | 打撃(得点) | 打撃/600打席 | 守備(得点) | WAR |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 大谷翔平 | 2018〜2026 | 4947 | +317.2 | +38.5 | 0.0 | 39.6 |
| 鈴木誠也 | 2022〜2026 | 2899 | +98.8 | +20.4 | +6.9 | 15.7 |
| 松井秀喜 | 2003〜2012 | 5066 | +120.3 | +14.2 | -79.4 | 13.2 |
| 吉田正尚 | 2023〜2026 | 1503 | +16.9 | +6.7 | -11.0 | 2.0 |
| 青木宣親 | 2012〜2017 | 3044 | +17.4 | +3.4 | +13.3 | 10.8 |
| イチロー | 2001〜2019 | 10734 | +54.0 | +3.0 | +158.9 | 59.8 |
| 福留孝介 | 2008〜2012 | 2276 | +2.8 | +0.7 | -20.6 | 3.8 |
| 城島健司 | 2006〜2009 | 1722 | -18.9 | -6.6 | +11.0 | 3.4 |
| 岩村明憲 | 2007〜2010 | 1755 | -20.8 | -7.1 | -22.7 | 3.2 |
| 田口壮 | 2002〜2009 | 1524 | -21.1 | -8.3 | -0.2 | 3.0 |
| 井口資仁 | 2005〜2008 | 2079 | -32.1 | -9.3 | -6.5 | 8.2 |
| 松井稼頭央 | 2004〜2010 | 2555 | -66.9 | -15.7 | -6.5 | 5.7 |
打撃の得点の通算では、松井の+120.3は大谷に次ぐ2番目になる。
600打席あたりでは大谷と鈴木誠也が上にいる。
イチローと並べると、打撃と守備のどちらで点を稼いだかが正反対だ。
イチローは打撃が600打席あたり+3.0とほぼ平均で、守備の+158.9がWAR 59.8の大きな部分を占める。
打席数も10734と松井の2倍以上あり、そのぶん代替選手との差の分も大きくなる。
松井は打撃で+120点を稼ぎ、その大半が守備とポジション補正で差し引かれている。