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Steam アーリーアクセス公開ガイド

Steamでアーリーアクセスとしてゲームを公開するまでの流れ。ストアページ審査、ビルドアップロード、公開、公開後の運用まで。

前提条件

  • Steam Directアカウント($100の登録料)
  • 税務情報・銀行口座情報の登録完了
  • ストアページ作成済み
  • アーリーアクセスとして設定済み

公開までの流れ

1. ストアページ審査

ストアページを申請すると審査が入る。通常1〜5営業日。

承認されると「近日登場」として自動公開される。この時点ではまだ購入不可だが、ウィッシュリスト登録は可能。

2. Early Access FAQ(リジェクト注意)

アーリーアクセスでは専用のFAQ回答が必須。ここが不十分だとリジェクトされる。

特に「What is the current state of the Early Access version?」(現在の状態)は詳しく書く必要がある。

機能がほぼ実装済みの場合:

All features listed in the ‘About This’ section are currently implemented, with the exception of [未実装機能]. Please refer to the ‘About This’ section for detailed information about the game’s current features and content.

「About Thisを見てね」だけでも通る場合があるが、未実装機能があるなら明記した方が安全。

3. カプセル画像の審査(リジェクト多発)

カプセル画像(ヘッダー、メインカプセル、小型カプセル、縦型カプセル)はかなり厳しくチェックされる。

許可されるもの:

  • ゲームアートワーク
  • ゲーム名(ロゴ)
  • 公式サブタイトル

禁止されるもの:

  • 説明文
  • マーケティングコピー
  • キャッチフレーズ
  • 受賞歴やレビュースコア

よくあるリジェクト原因:

  • 日本語+英語のバイリンガルロゴが「追加テキスト」と判断される
  • ライブラリロゴの透過が不十分
  • ライブラリヒーローにロゴやテキストが入っている

具体的にどこが問題か教えてもらえない場合は、サポートに問い合わせて具体的な指摘を求める。

4. ビルドのアップロード

2GB以下のゲームならWebからのHTTPアップロードが手軽。

アクセス方法:

  1. 全てのアプリケーション → 該当ゲームの「SteamWorks管理」
  2. 上部メニューの「SteamPipe」タブ
  3. 「HTTPでデポをアップロード」

ファイル構成:

MyGame.zip
└── MyGame/
    ├── MyGame.exe
    ├── data/
    └── config/

EXEを直接zipのルートに置くとエラーになることがある。1階層フォルダを作ってその中にEXEを入れる。

アップロード後:

  1. デポが自動作成される
  2. ビルドを作成(アップロードしたデポを含む)
  3. ビルドをdefaultブランチに設定

大容量のゲーム(数十GB)の場合はSteamCMD/ContentBuilderを使う。

5. 公開

すべての審査が完了すると、管理画面に「リリース」ボタンが表示される。

リリースの承認済み
ストアプレゼンス:公開中
ゲームビルド:レビュー承認済み
リリース:ボタンを押すと公開

公開前の最終確認:

  • 価格設定は正しいか
  • スクリーンショットは最新か
  • アップロードしたビルドは正しいバージョンか

ボタンを押すと即時公開。一度公開すると取り消しできない。


公開後の運用

売上の確認

Reports → Sales & Activations

項目意味
Lifetime Steam revenue (gross)総売上(税・手数料込み)
Lifetime Steam revenue (net)返金・チャージバック・税を引いた額
Lifetime Steam units販売本数

実際に受け取れる金額 ≈ net × 0.7(Steamの手数料30%を引いた額)

開発者キーの発行

スタッフにゲームを配布したい場合:

  1. 「Steam製品キーをリクエスト」
  2. 「開発者自動付与」→「外部開発チーム」を選択
  3. 必要な数を入力して申請

数十個程度なら問題なく承認される。

ビルドのアップデート

審査不要で即時公開。

  1. 修正したEXEをZIPに圧縮
  2. SteamPipe → HTTPでデポをアップロード
  3. 「標準オプション」を選択してアップロード
  4. 新しいビルドを作成
  5. defaultブランチに設定 → 自動配信開始

ミニアップデート通知を入れると、ユーザーに更新が伝わる。


よくある問題

「リリース済み」になってしまった

公開予定日を過ぎると自動的に「リリース済み」になる。管理画面上では以下のメッセージが表示され、自分では変更できない。

このアプリケーションは現在「リリース済み」として登録されているため、遡及的に早期アクセスとして登録しなおすことはできません。

対処法: Steamサポートに問い合わせる。「Early Access」のフォームから事情を説明すれば対応してもらえる。

問い合わせ例:

The game was automatically set to “Released” status when the original planned release date passed. I would like to change the release state to “Early Access” because the game is still in active development.

SteamPipeが見つからない

SteamWorksのナビゲーションが分かりづらい。

正しいルート:

  1. 全てのアプリケーション
  2. 該当ゲームの「SteamWorks管理」をクリック
  3. 上部メニューの「SteamPipe」タブ

アプリ個別ページの左メニューからは見つからないことがある。

審査で具体的な指摘がない

何度修正してもリジェクトされる場合、サポートに具体的な指摘を求める:

Could you please provide specific examples of which element(s) in our current images are considered “additional text overlay”? We want to comply fully but need more specific guidance.


デポ・ビルド・ブランチの関係

概念説明
デポファイルの実体(アップロードしたZIP)
ビルド1つ以上のデポをまとめたもの
ブランチどのビルドを配信するか指定

複数デポを使うケース:

  • プラットフォーム別(Windows/Mac/Linux)
  • 言語別アセット
  • コンテンツ分割(HDテクスチャなど)
  • DLC

EXE1個だけのゲームならデポも1つで十分。


参考リンク


感想

初回公開は超ハマった。

カプセル画像は何度直してもリジェクト、具体的にどこがダメか教えてくれない、SteamPipeの場所が分からない、公開予定日を過ぎてリリース済みになってサポートに泣きつく、などなど。ストアページ承認まで何往復したか分からない。

で、公開後にバグが見つかって慌てて修正版をアップしたら…

審査なしで即時公開。

初回のあの苦労は何だったんだ。


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