Seedance 2.0がハリウッドに著作権で詰められてAPI無期限停止になった
前回の記事で「2月中下旬にAPI公開予定」と書いたが、状況が変わった。Seedance 2.0がハリウッドの著作権問題で燃えて、APIは無期限停止、主要機能も大幅に制限されている。
何が起きたか
2月10日にSeedance 2.0が中国国内の即梦(Jimeng)でリリースされたんだけど、直後からユーザーがハリウッド映画のキャラクターや俳優の肖像を使ったAI動画を大量に生成してSNSに流しまくった。
火付け役になったのは、アイルランド人映画監督Ruairi Robinsonが2行のプロンプトで生成したTom Cruise vs Brad Pittの格闘シーン。Xで100万回以上再生された。その後、Avengers: Endgameのリメイク、Game of Thronesの別エンディング、Stranger Thingsのリブートなど、ハリウッドIPを使った動画が次々と投稿された。
ハリウッドの反応
ここからハリウッドの動きが速かった。2月13日から約1週間で主要スタジオが一斉にcease-and-desistを送りつけている。
| 日付 | 組織 | アクション |
|---|---|---|
| 2/13 | Disney | cease-and-desist送付。Marvel、Star Wars、PixarのIP侵害を「バーチャルな強奪」と表現 |
| 2/13 | MPA(米国映画協会) | CEO Charles Rivkinが「直ちに侵害行為を停止せよ」と要求 |
| 2/13 | SAG-AFTRA(俳優組合) | 「露骨な侵害」と非難。メンバーの声と肖像の無断使用を問題視 |
| 2/14 | Paramount Skydance | cease-and-desist送付。South Park、Star Trek、The Godfatherの侵害を主張 |
| 2/17 | Netflix | cease-and-desist送付。Stranger Things、Bridgertonの侵害。3日以内の対応と即時訴訟を警告。最も強硬 |
| 2/17 | Warner Bros. | cease-and-desist送付。DCヒーローの無断使用を「意図的な設計選択」と非難 |
| 2/20 | CAA(タレントエージェンシー) | 「クリエイターの権利への露骨な無視」と声明 |
| 2/21 | MPA | 正式なcease-and-desist書簡をByteDanceに送付。生成AI企業へのcease-and-desistとしては初 |
MPAが一番怒っているのは、ByteDanceが著作権付きの映像作品を大規模に無許諾で学習データに使った点。「不注意ではなくシステム的な侵害(systemic infringement rather than inadvertence)」「機能であってバグではない(a feature, not a bug)」と言っている。
停止・制限された機能
ByteDanceはリリースから数日で機能を制限・停止した。
| 機能 | 状態 |
|---|---|
| 実在人物の画像・動画リファレンス | 停止 |
| 顔写真→音声生成(写真1枚で本人の声を生成) | 停止 |
| 顔・声のクローン | 全面無効化 |
| グローバルAPI | 無期限停止 |
| 著作権キャラクターの生成 | フィルタリング強化 |
中国国内版(即梦、豆包)では、自分の顔を使いたい場合にライブネス認証(本人確認のための顔撮影)が必須になった。他人の顔は使えない。
1.5 Proで使えていた機能がそのまま使えなくなるわけではないが、1.5 ProにもIP・肖像関連のコンテンツフィルタリングが導入されている。
ByteDanceの対応
2月16日にAP通信・BBCへ声明を出した。
知的財産権を尊重しており、ユーザーによる知的財産権および肖像の無断使用を防ぐため、現行のセーフガードを強化する措置を講じている
BytePlus(海外向けクラウドサービス)は「著作権保護メカニズムとディープフェイク防御策の迅速な改善を経て、できるだけ早く関連サービスを正式に開放する。具体的な公開時期は追って発表する」としている。
MPAはこの声明を「一般的な声明」として不十分と退けた。
API待ちだった人への影響
前回の記事で整理したComfyUI連携の話は、当面すべて凍結。2月24日がAPI公開予定日だったのに、無期限延期になった。再開時期は未定。
仮に再開されても、こういう変更は入るだろう。
- 人物リファレンス機能の大幅制限: Universal Referenceで任意の人物を参照して動画を生成する使い方は、著作権・肖像権のフィルタリングが入るため制限される可能性が高い。自分の顔だけ(本人確認済み)に限定される方向
- コンテンツフィルタリングの強化: 著作権キャラクター、著名人の肖像、暴力的コンテンツなどの生成前ブロックが強化される
- 1.5 Pro APIにも波及: 2.0だけでなく1.5 Pro APIにも同様のフィルタリングが適用されている
動画生成AIの著作権リスク
今回の件はSeedanceだけの話じゃない。Seedanceが目立ったのは、品質が高すぎて「本当にそれっぽい動画が作れてしまった」から。
Sora 2、Veo 3.1、Kling 2.xなど他の動画生成AIも、学習データに著作権コンテンツが含まれている点は同じ。Seedanceが最初に狙い撃ちされた形だが、他のサービスにも同じ圧力がかかってもおかしくない。
MPAのcease-and-desistは生成AI企業への初の事例で、前例としてかなり重い。ハリウッドが本格的に動き始めたことで、動画生成AI全体のサービス提供形態に影響が出てくるかもしれない。