UI/UX開発の手戻り問題、現場から見た本音
RagateさんのUI/UX開発の手戻りに関する調査レポートを読んだ。
後半は宣伝なので置いておくとして、前半の調査結果がなかなか面白かったので、現場目線で思ったことを書いておく。
調査のポイント
- 約50%のプロジェクトでデザインと実装の乖離による手戻りが発生
- 4社に1社が「ほぼ毎回」または「半分以上で発生」
- デザインツールはPowerPoint/Keynoteが32.4%でトップ
- バイブコーディング(生成AI活用)は21.8%が既に使用中
- 約半数がバイブコーディングの導入済みまたは検討中
デザインツールの現実
PowerPoint/Keynoteがトップというのは一見意外だけど、自分の経験と照らし合わせると納得感がある。
- 大企業: パワポかPDFで渡してくる。承認フローを回すために、誰でも開けるフォーマットになる
- 中堅・クリエイティブ系: ワイヤーから始めてAI/PSDでモック作成。デザイナーが慣れた道具で進める
- Figma: ごく少数
Figmaは「エンジニアとの協業」を売りにしてるけど、発注側がFigma使いこなせないと意味がない。受託だとクライアントが使えるツールに合わせざるを得ないから、結局パワポかPSDに戻る。
個人的にはXDのほうが楽だったなとか、いやXDもクソだったなとか、もうイラレでいいだろとか思う。ツールが増えるたびに「これで統一しましょう」って話になるけど、結局みんな慣れたやつに戻る。
バイブコーディングは見えない
調査では21.8%が使用中とあるが、自分の現場ではまだ見ていない。というか自分しかやってない。
これは自分がメインで書いているせいかもしれない。他の人が主幹な部分を書いていないので、AIで作ったのかどうかもよくわからない。
コードって最終的にはコードだから、AIが書いたかどうか外からわからない。「AI使ってます」と自己申告する文化もないし、コミットログに残すわけでもない。
バイブコーディングの普及率って、チーム内でも可視化されてない暗数がありそう。
手戻りの2パターン
手戻りは大きく2パターンある。
パターンA: デザイナーの脳内を実装で再現するのが難しい
「この微妙なシャドウの落ち方」「このホバー時のぬるっとした動き」。静止画では伝わらないし、CSSで再現しようとすると工数が爆発する。結局「画像で書き出すか、妥協するか」の二択になりがち。
パターンB: クライアントの「なんか違う」
これが一番しんどい。指示通りやって、レビューも通って、ブラッシュアップを重ねた結果「イメージと違う」。最初のイメージが言語化されてなかったか、途中で脳内が変わったか。
どっちも根本は「完成形が共有されてない」こと。
フルスタック論への違和感
最近よく「フロントとバック両方できなきゃ」という話を聞くけど、できるに越したことはないが、作業は分けて進めたほうが進行管理上いいと思っている。
自分はHTMLコーディングがそこまで得意じゃない(CSSクラス名を省略しようとしたり、ルールに厳密に従いすぎて変な名前つけたり)ので、だいたい人に任せている。でも誰に任せても手戻りは発生する。
分業のメリット:
- 並行作業できる(工期短縮)
- 得意な人がやるから品質安定
- レビューが機能する
あと経験則として:
- バックエンドの人: 動くの優先でデザイン性が低いものを作りがち
- フロントエンドの人: デザイン優先でシステム構築上やばいものを作りがち
これ「両方できるフルスタック」でも解消しない。どっちを優先する思考回路かの問題だから。
「相互理解のためのフルスタック」はわかる。相手の制約がわかるから会話が成立する。でも「お前一人でやれフルスタック」は破綻する。単に人件費ケチりたいだけで、結局どっちかの品質が犠牲になる。
「できないがわかる」チーム
理想は「できないがわかる」人だけで組むこと。
- コーダー「このデザイン、実装だと工数やばい」
- デザイナー「あーそこ削れます」
- サーバ「このAPI設計だとフロントつらくない?」
- バック「じゃあこう返すわ」
この会話が成立するかどうか。「できる」より「相手の限界を想像できる」ほうがチームとしては強い。
少なくともチーム内での意志は統一できる。クライアントは知らんが。
AIの使いどころ
結論として、AIの現実的な使いどころは:
- コード生成: 万能ではない、手戻りは残る
- 思考の言語化・翻訳: こっちのほうが効くかも
例えば、AIに思ってることを毎度ぶん投げて、いい感じに翻訳してSlackとかにためておく。属人化した暗黙知をチームの形式知にする、という使い方。
バイブコーディングで一気通貫に作っても、結局デザインの手戻りはなくならない。
現状ではどんなにいい仕様書やドキュメント、リファレンスを整備しても、一発で使えるものは上がらない。でかくなればなるほど。
なので人間の介在がいるし、素人では無理。やっぱり知識のある人が組むしかない。
AIは補助輪であって、何を作るべきか・何がマズいかの判断は人間がやる。そこは変わらない。
ちなみに、この手の「伝言ゲームで要件がおかしくなる」問題を風刺した有名なイラストがある。
「Tree Swing Cartoon」で検索すると出てくる。
何十年も前から同じ問題が繰り返されてるということだ。
