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Twitter鳥とGitHub Octocatの生みの親 Simon Oxleyが56歳で逝去

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Twitterの青い鳥とGitHubのOctocat。
テック業界で最も認知されているアイコンの2つを生んだデザイナー、Simon Oxley(サイモン・オックスリー)が2026年4月4日に56歳で亡くなった。

どちらもストックフォトサイトで数ドルで販売されたイラストだった。
Oxley自身、Twitterに採用されたことを3年間知らなかったという。

ストックフォトから生まれたアイコン

Oxleyはイギリス・ハンプシャー州キングスクリア出身のフリーランスイラストレーターで、「Idokungfoo」名義で活動していた。
2004年頃にマイクロストックフォトサイト「iStockphoto」と出会い、ベクターイラストの投稿を始める。

マイクロストックとは、従来の写真エージェンシーと違い、数ドル〜十数ドルという低価格でロイヤリティフリーの画像を販売するモデルだ。
クリエイターにとっては単価が低いぶん、大量に制作して数で稼ぐ「ソーセージ工場」的なビジネスになる。
Oxleyはこの環境で精力的にイラストを量産し、iStockphotoのCEOからロゴのリデザインを依頼されるほどの人気クリエイターになった。

そして2006年、彼がiStockphotoにアップロードした1枚の幾何学的な青い鳥のイラストが、テック史を変えることになる。

Twitterの青い鳥

2006年、Twitterの創業チームはSMSベースの新サービスにふさわしいフレンドリーなビジュアルを探していた。
iStockphotoでOxleyの鳥のイラストを見つけ、$10〜$15で購入。
プラットフォーム手数料を引いたOxleyの取り分は、わずか$2〜$6だった。

Oxleyはこの鳥に30分ほどしかかけていなかったという。
日本の美学にインスパイアされた、シンプルな角度と曲線で構成されたデザインだった。

共同創業者のBiz Stoneはこの鳥を「Larry」と名付けた。
NBAの伝説的選手Larry Birdにちなんだネーミングだ。

3年間知らなかった

Oxleyが自分の鳥がTwitterのアイコンになっていると気づいたのは、2009年のことだった。
自宅でビールを飲みながらテレビを見ていたら、CNNの画面に自分がデザインした鳥が映っていた。

「飲んでいたビールのラベルを確認して、妻を呼んで画面を見せた」

本人がインタビューで語ったエピソードだ。

ロイヤリティフリーの落とし穴

ここで問題が起きた。
iStockphotoのロイヤリティフリーライセンスには、購入した画像を登録商標や企業の独占ロゴとして使用することを禁止する条項があった。

ロイヤリティフリーライセンスとは、一度購入すれば使用回数や期間の制限なく使えるライセンス形態だ。
ただし「何にでも使える」わけではなく、多くのストックフォトサービスでは商標登録への使用を明確に禁じている。
同じ画像を他の購入者も使えるため、独占的なブランドアイデンティティとしての利用は想定外という理屈だ。

Twitterはこの制約により、Oxleyのオリジナルデザインをそのまま使い続けることができなくなった。
2012年にTwitterは社内デザインチームによるリデザインを実施し、現在知られている洗練された鳥のロゴに切り替えた。
なお、2023年にはElon MuskがTwitterをXにリブランディングし、鳥のロゴ自体が廃止されている。

flowchart TD
    A[Oxleyが鳥のイラストを制作<br/>制作時間: 約30分] --> B[iStockphotoにアップロード<br/>2006年]
    B --> C[Twitter創業チームが発見<br/>$10〜$15で購入]
    C --> D[Oxleyの手取り: $2〜$6]
    C --> E[Twitterのアイコンとして採用<br/>愛称「Larry」]
    E --> F[Oxleyは3年間気づかず<br/>2009年にCNNで発見]
    E --> G[ライセンス問題が発覚<br/>ストック画像は商標登録不可]
    G --> H[Twitter社内でリデザイン<br/>2012年]
    H --> I[Xへのリブランディング<br/>鳥ロゴ廃止 2023年]

GitHub Octocatの誕生

Twitterの鳥とほぼ同時期の2007年、Oxleyはもう1つの運命的なイラストをiStockphotoにアップロードしていた。
猫の頭に5本のタコの触手が生えたキメラ的なキャラクターで、タイトルは「Octopuss」。

2008年、GitHubの創業チームは404エラーページに使うユーモラスなイラストを探していた。
iStockphotoでこの「Octopuss」を発見し、採用を決定。
Twitterのケースと違い、GitHubはOxleyに直接連絡を取り、独占的な使用権を交渉した。

キャラクターは「Octocat」と改名され、オープンソースコミュニティのシンボルとして爆発的に広まった。
GitHubは社内イラストレーターのCameron McEfeeを雇い、Octocatのバリエーションを大量に制作。
コミュニティが自由にOctocatの派生イラストを投稿できる「Octodex」というギャラリーも立ち上がった。

「octopus merge」との関係

「Octocat」という名前は、Gitの技術用語「octopus merge」にも掛けている。
octopus mergeとは、3つ以上のブランチを同時にマージする操作のことだ。
通常のmergeは2つのブランチを統合するが、octopus mergeは複数ブランチを一度に統合できる。

# 通常のmerge(2ブランチ)
git merge feature-branch

# octopus merge(3ブランチ以上を同時にマージ)
git merge feature-a feature-b feature-c

タコの複数の触手が複数のブランチを同時に掴むイメージと重なるネーミングだ。
Oxley本人がこのGit用語を意識してデザインしたわけではないが、偶然の一致が命名をより意味深いものにしている。

Oxleyの主なデザイン作品

作品企業取得方法
青い鳥アイコンTwitter2006年iStockphotoで$10〜$15で購入
OctocatGitHub2007〜2008年独占ライセンスを交渉
Puffer FishBitly不明ストックイラスト
Sammy the SharkDigitalOcean不明直接依頼
PulumipusPulumi不明直接依頼

iStockphotoを経由した初期の作品と、知名度が上がってからの直接依頼案件とでは、取得方法が大きく異なる。
Twitterの件で世界的に知られるようになったことが、キャリアの転換点だった。

日本で過ごした12年間

Oxleyは1999年頃に来日し、2012年頃まで約12年間を日本で過ごしている。
最初は原宿で活動し、その後福岡に移り住んで日本人の妻・紀子さんとの生活を築いた。
2002年にはIdokungfooスタジオを設立し、日本国内企業向けのデザインワークも手がけていた。

日本の「かわいい」文化、特にゆるキャラに代表されるマスコット文化は、Oxleyのデザイン哲学に大きな影響を与えた。
幾何学的でありながら親しみやすく、シンプルな線で構成されたキャラクター。
Twitterの鳥もOctocatも、この「かわいい」の影響が色濃く出ている。

帰国後はオックスフォード近郊の田舎に移り住み、フリーランスの仕事を続けながら、シュルレアリスム的な抽象表現主義の作品もDribbbleSaatchi Artで発表していた。


$6の取り分で描いた30分のイラストが、10億人以上のユーザーに毎日見られるアイコンになった。
本人は最後までそのことを面白がっていたようだ。
ポートフォリオサイト(idokungfoo.com)の追悼文にはこう書かれている。

「Simonは亡くなりましたが、彼のすべてのデザインとアイデアは生き続けます」