MySQLは死ぬのか?2026年のMySQL・MariaDB事情を整理した
最近「MySQLが死ぬのでは」という声をちらほら見かける。GitHubのコミットが止まっただの、Oracleがレイオフしただの。
正直「GitHubにコミットされない程度で死なないだろ」と思いつつ、でもOracleだからなあ……という不安もある。そういえばフォークされたMariaDBはどうなったんだっけ?
気になったので2026年1月時点の状況を整理してみた。
「MySQLが死ぬ」と言われている理由
GitHubのコミット激減
mysql/mysql-serverリポジトリのコミット数が激減している。
- 2010年: 約22,360コミット
- 2024年: 約4,730コミット
- 2025年9月以降: 3ヶ月以上コミットなし
2025年は2000〜2001年の創設期以来、最低のコミット数を記録した。
Oracleの大規模レイオフ
2025年9月、MySQLコア開発チームの推定60〜70%がレイオフされた。MySQL創設者のMonty Wideniusは「Heartbroken(心が痛む)」とコメントしている。
コントリビューター数もピーク時(2006年Q3)の198人から、2025年Q3には約75人まで減少。Oracle買収時(2010年)の82人よりさらに少ない。
「そんなことない」派の主張
依然として世界2位
DB-Enginesランキングで世界2位(1位はOracle DB)。「世界で最も使われているWebデータベース」という地位は揺らいでいない。WordPressもMySQLだし、そう簡単には死なない。
MySQL 8.4 LTSへの移行パス
MySQL 8.0は2026年4月にEOLを迎えるが、8.4 LTSが用意されている。Oracle公式はInnovation版とLTS版の2トラック体制を発表しており、「サポート切れで放置」という状況ではない。
企業が独自フォークを維持
PlanetScale CEOのSam Lambertは「MySQLはWebの基盤であり、数百万の製品を支えている。我々は独自フォークを維持しており、MySQLを支え続ける」と発言している。
でもOracleだから……という不安
茹でガエル
Percona共同創業者のPeter Zaitsevは、OracleのMySQL扱いを「茹でガエル」に例えた。
「Oracleは徐々にクラウドとエンタープライズ版に機能を移し、スタッフを減らしてきた。コミュニティにとっては良くない。MySQLの潜在能力が十分に発揮されていない」
エンタープライズ機能の囲い込み
Community版とEnterprise版で機能差がある。
| 機能 | Community | Enterprise |
|---|---|---|
| スレッドプーリング | × | ○ |
| キー管理プラグイン | × | ○ |
| 高度な監査機能 | × | ○ |
MariaDBでは同等機能がオープンソース版で利用可能。「オープンソースとは何だったのか」という気持ちになる。
2026年1月のコミュニティ会議
1月14日、サンフランシスコで開発者が集まり、MySQLの将来について議論した。
議題は「Oracleに任せ続けるか、フォークを作るか」。フォークの選択肢として挙がったのは:
- ハードフォーク: MariaDBのように完全に分岐する
- トラッキングフォーク: Percona Server for MySQLのように本家に追従しつつ機能追加
Zaitsev曰く「トラッキングフォークの方がMySQL互換性は高い。MariaDBはハードフォークなので互換性が徐々に乖離している」とのこと。
Oracle担当者も出席したらしい。「愛されない場だとわかっていて来たのは評価できる」(Zaitsev)。
MariaDBはどうなった?
会社の状況
- 2023年: IPO実施
- 2024年: K1 Investment Management(プライベートエクイティ)に全株買収され非公開化
- 新CEOに交代
MariaDB Foundationは「GPL v2のもとでフリー・オープンソースであり続ける」と声明を出している。
開発は継続中
現在サポート中のLTS版:
- MariaDB 11.8
- MariaDB 11.4
- MariaDB 10.11
- MariaDB 10.6(2026年7月EOL)
12.3(2026年Q2予定)からLTSの運用方法が変更される予定。
MySQLとの互換性
ハードフォークなので、MySQLとの互換性は徐々に乖離している。ただしOracle DB互換性(シーケンス、PL/SQL風構文など)はMariaDBの方が充実。
クラウド対応
- AWS RDS: MariaDB 11.8.5対応済み
- Azure: Azure Database for MariaDBは非推奨になり、MySQL Flexible Serverへの移行を推奨
Azureから見放されたのは地味に痛い。
セキュリティ実績
2025年のCVE件数:
- MySQL: 123件(うちMySQL固有: 117件)
- MariaDB: 8件
これだけ見るとMariaDBの方が安全に見えるが、単純比較は難しい。MySQL固有のCVEが多いのは、Oracleがセキュリティパッチを積極的に公開しているとも解釈できる。
結局どうなのか
| 観点 | MySQL | MariaDB |
|---|---|---|
| シェア | 世界2位、圧倒的 | Fortune 500の75%が採用 |
| 開発活発さ | 停滞中 | 継続中 |
| オープンソース度 | 機能囲い込みあり | フル機能がOSS |
| 企業サポート | Oracle(不安定?) | K1買収後は未知数 |
| MySQL互換性 | 本家 | 乖離中 |
「GitHubのコミットが止まった程度で死なない」は事実。依然として世界2位だし、8.4 LTSもある。
ただ、Oracleの姿勢が後退しているのは明らか。コミュニティが動き出したのはその危機感の表れだろう。
一方MariaDBは開発継続中だが、会社がPEに買収されたのは別の不安要素。「オープンソースを維持する」と言ってはいるが、PE傘下でどこまで続くかは未知数。
どっちも微妙に不安というのが正直なところ。
新規プロジェクトならPostgreSQLを選ぶのが無難かもしれない。既存のMySQL資産があるなら、8.4 LTSへの移行を進めつつ、コミュニティの動向を注視する形になりそう。